犬夜叉は殺生丸が気持ち良いと感じていると思えたことが無い。少なくともその色が殺生丸の顔に浮かんだことを見たことが無かった。
確かに反応してる体や艶やかに桜に染まる肌を見ていればきっと悪いことはないのだろうがそれでも交合してる際のその面差しはまるで痛みを耐えているが如く険しい顔で、もしかしたら齎しているのは快楽ではなく痛みの方が大きいのかもしれないと思ったことも一度や二度では無い。
そんな無理を強いたくはないと心から思うのは本当なのにしかし届くならばつい手を伸ばさずに居られないほど焦がれてるのも事実だ。
今晩もそれと変わらない夜、の筈だった。
後ろから抱き込むようにすると少しばかりまだ殺生丸の方が上背がある分余る。それでも足の間に腰を掴んで引き寄せて少しずつ襦袢を下げながら首から肩に顔を埋めて唇だけで辿って痕を残す。
殺生丸は何も言わず犬夜叉の好きにさせていた。
腰に回した手でやんわり下腹部を撫でながら更に背中に唇を落とす。それだけのことで酷く興奮して白い肌に思わず噛み付いた。これは犬夜叉の癖だ。今でこそ少しばかり落ち着いたが最初の朝、日の光に曝された殺生丸の体は数え切れない程噛み痕が残っていて思わずどうしたのか聞いたくらいである。
理性のある今のうちは所謂甘噛み程度だがそれを飛ばすとかなりの強さで噛んでいるのが見てとれる痕を残す。見るたび反省はするのだがどうしても繰り返してしまう。
女のそれくらい白い、いや下手な女より白い肌とその下の女にはけしてないしっかりとした筋肉に歯を立てる感触が病み付きになってしまっているのだと自覚はあった。
ただまだそればかりは気をつけようと隆起した背中を柔らかく噛んでは舐める。
何故か珍しく性急な気分にならなくてややそれを続けていたが、少しずつだが殺生丸の背が丸まって濡れていくのがわかった。舐めていたせいかと思っていたが腰の方が既に汗ばんでいる。
聞けばほんの少し、微妙な違いだが呼吸も浅い。
汗で背につく髪を避けながら窪みを舌で擽ると少しばかり体を震わせた。こんな些細な刺激で反応するほど覚えのある体は敏感ではなかった筈だ。体の不調まで訝ったところで今まで全く動かなかった殺生丸の腕が犬夜叉の手を掴んだ。その強さから切迫した何かを感じどうしたと思うより前に気が付いた。
白い背中を辿るばかりに気がいって前に回した手が何をするか気をやらなかった。少しばかり殺生丸を抱くことに馴れた体は自然兄の一番悦いであろうところを緩やかに刺激し続けていて。
当然の如く知ったる手は無意識にでも蹂躙できる手管で、起立しきったそれは限界が近づいても反らすような緩やかさで刺激され続けて下衣を脱ぐ前に既に追い詰められきっていた。
何も言わずにそれに堪え続けた殺生丸は自然長い時間焦らされ続けたことになり、このような緩やかな愛撫にも過剰に反応していたのだ。
「っ…あ、…悪ぃ」
同性としてそのもどかしさがすぐにわかって焦って腕の中の人を肩を掴んで押し倒す。
抵抗もなく床に寝そべった兄は、見たことのない表情をしていた。
その眉はつまり常とは変わらずきつくしかめられていたのだが、その端がいつもよりやや低い。どうにも殺生丸にその表現を使うことは憚られたがその貌はこう表現するしかなかった。
まるで、今にも泣きそうな。
その通りに殺生丸の眦には光るものが今にも溢れそうになっていて、それなのにしきりに瞬きをするものだからとうとう緩やかに曲線を描いて零れた。その頬も目尻も桜色などではなく熟れきった果実のように紅潮していて白い肌が全く違うもののように見えたくらいだ。
浅く繰り返される呼吸に我に帰り改めて思った。
こんな顔の殺生丸は、見たことがない。
潤んで蕩けた瞳に誘われてこめかみから目尻まで舐め上げるとふるりと身を震わせた。何時になく敏感な反応に少し戸惑いながら中途半端に脱がせたものを剥ぐ。
下衣を取り払うとそのきぬ擦れの感覚にも足が跳ねた。とりあえず中心だけ寛げると今まで見たことないほどそれは反り返ってしどとに濡れている。
犬夜叉は、思わず息を飲んだ。
自分の今目の前の情景が有り体に言えばあまりに、扇情的で。
あまりにしどけない姿を晒している殺生丸に犬夜叉は困惑しながらどうしようなく興奮した。
こんな顔を、するのか。
ひざ頭を寄せて腰を揺らすのはもう堪え難いということを言外に伝えて、それを無意識にすることに犬夜叉はたまらなくなった。震えているものを緩く握りこむとびくびくと震える体が熱くなっているのが嬉しくて被さるようにして今度は胸元に噛み付く。さっきより加減出来ていないことを自覚していたが赤みがさした肌は匂い立つように犬夜叉を誘って何度も噛む。その度に手の中のものが脈打つのがわかって調子に乗って更に噛む。握っていただけのそれを揉むように力を込めると皮膚の下が張り詰めるのを感じて噛む力も自ずと強くなる。
それでもまだ達せない強さでそれを刺激すると殺生丸が喉からくぅ、と抜けるような声を出した。
犬夜叉は、少しばかり語弊を生じるかもしれないが感動していた。自分の手が齎した刺激にここまで顕著に殺生丸が反応し、声を出すとは。
感動と共に犬夜叉は別の欲求にもかられた。
「っあ…ぁ……な、に……っ」
「少し我慢しろよ」
あと一回か二回手を上下させれば達せるくらいに昇りつめたそれの根本を強く締められた痛みに思わず殺生丸は声を押さえられなかった。
犬夜叉の手によって戒められたそれは変わらず先走りを漏らしながら震え続ける。それに犬夜叉は顔を近付け呼気が感じられるほど近づくと躊躇なく深くそれを含んだ。
口淫はしたことがなかった。今までは必死で余計なことを考える事なく勢いのまま行為を終えていたのでどうしたら殺生丸が気持ちが良いかなど考えが及ばなかった。
しかし何故かこの日は殺生丸の恥態を見ていると興奮する一方で冷静にもっと善がらせたいと思えた。
迷いなく含んだは良いがどうしたらいいのかわからずとりあえず歯だけは立てないように表面を舐めた。独特の青臭さが鼻をつくが気になるほどではなく一度口から出して下から裏側をゆっくり舐め上げる。
殺生丸が息を詰めるのがわかってもっと、と思い先端を擽るようにすると髪を掴まれた。
引っ張られるそれはそこまで力が篭っていなかったが出ている爪が頭に刺さって少しばかり痛んだ。
「……っひ…っああ!」
少しばかり意趣返しのつもりで先端の窪みを尖らせた舌でえぐるとびくびくと跳ねた腰と足に、聞いたことのない声が確かに殺生丸の口から出た。咄嗟に犬夜叉の頭を掴んでいた手を口元に持って行ったが間に合わず犬夜叉の耳に入ったその声に犬夜叉はひどく高揚した。
殺生丸が自分の手でこんなにも。
それからは、ひたすら夢中だった。
「ぃ……っあ、ぁあっ…」
ひたすら達せないまましゃぶられ続け後ろも弄られ始めたくらいから殺生丸はとうとう声を噛み殺すことが殆ど出来なくなり、震える体は弛緩したままもはや足を閉じることさえ叶わなかった。
足を犬夜叉の肩の上に抱えられたときには、やっとかと少し安堵したくらいだ。
無論入れた衝撃でとうとう長い間せき止められていた精を吐き出し気をやってしまった殺生丸に何の罪はなく。
犬夜叉の自業自得に他ならなかった。